最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)594号 判決 1971年11月19日
上告人
株式会社平山組
代理人
神代宗衛
被上告人
江島豊季
代理人
清川明
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人神代宗衛の上告理由について。
所論第二の点に関する原審の事実認定は、原判決の挙示する証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係のもとにおいては、原判決の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法は認められない。それゆえ、論旨は採用することができない。
所論第三の点に関し、原審は、民法一七四条五号にいう「動産ノ損料」とは、貸寝具、貸衣裳、貸葬具、あるいは貸ボート等のような極めて短期の動産賃貸借に基づく賃料をいうものと解するのが相当である。けだし、このような賃料は、極めて短期に決済され、その弁済につき領収書を授受しないのを通常とするため、特に短期の時効に服せしめてその権利関係を短期に決着させることにより、将来の紛争を防止する要があるのであつて、同条同号の法意はこのように解すべきものと考えられるからである。したがつて、土木建設用の重機械であるショベルドーザーが、営業のため、数ケ月にわたり、毎月二五日締切り翌月一〇日払の約定で賃貸された本件のような場合における賃料は、右同条同号にいう「動産ノ損料」には該当しないものというべきである旨の説示をするところ、原審の右判断は正当として是認するに足りる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岡原昌男 色川幸太郎 村上朝一 小川信雄)